さて最近特に低学年の子の保護者の方から、プレーについて同様の質問をいただくのですが、せっかくなのでこのブログで回答したいと思います。
■質問
1,自分のところにボールが転がってきた際に、コーチは「ボールを蹴るな!」と言ってますが、これはどういう事でしょうか?またその際に蹴らずにドリブルしてもすぐに相手に囲まれてボールを取られてしまいます。どうすれば良いのでしょうか?
2,西が丘サッカークラブは練習でも試合でもポジションを決めていないですが、なぜでしょうか?
■回答
1,について
これは試合形式の練習や試合の中で、自分のところにボールが転がってきた時や、相手からボールを奪った際に、とにかく力任せにボールを遠くに蹴ってしまうプレーがあった場面でこのような発言をしています。このシチュエーションに限らずサッカーのプレーで最優先されるものはゴールを奪う事です。ですので、この場合にまず考えなくてはいけない事はシュートしてゴールを奪えるか?という事です。しかし目の前に相手がたくさんいますし、正確なシュートを蹴ることができない、そもそもゴールまで届かないという事が現実ですので、そこで次の選択肢を考えます。それはドリブルであり、パスでもあります。それらのプレーも当然ゴールを奪う事を目的となりますので、その目的を達成するドリブルの仕方やパス(どの味方にパスを出せばゴールを奪う可能性が高まるのか?)という事になります。
サッカーのそれぞれのシチュエーションでは、一瞬にしてこれらの事を考え決断し行動しなければなりません。とても難しいプレーですが、何回失敗してもやらない限りは出来るようになりません。そこでその可能性を放棄するプレーには注意している次第です。今は出来なくてもいつか出来るようになります。
しかし低学年ですとせっかくボールを蹴らずに足元の配下に収めてドリブルしても結局は相手に囲まれてボールを取られてしまいます。このような際に私たちが掛ける言葉は「取り返せ!」くらいですね。高学年であれば、そのようなシチュエーションになりそうな時はあらかじめグランド内の味方の位置を把握して、また迫ってくる相手の力量も判断しドリブルやパスで交わすなりしてその状況を打開します。このようなプレーが理想的ですが、低学年の子にはまだそこまで求めていません。低学年の子はまずはきちんとボールを次のプレーがしやすい場所に収め、ドリブルでもパスでも何かしらやろうという意思を表現できればOKです。今はボールを取られてもそのうち上級生のようなプレーができるようになります。
2,について
例えば日本代表の内田選手は高校生までFWやMFでプレーしていたそうです。しかしそのポジションで限界を感じ、サイドバックにポジションを変更してからブレイクしたそうです。また以前インタビューした佐伯選手は、小学校の頃はFWやDFだったそうですが、中学からMFに変更して長く現役を続けました。このように小さい頃のポジションとは別のポジションで大成した選手は日本にも海外にもたくさんいます。ですので、私たちは子供達が将来どのポジションでも出来るように色々なポジションをやらせています。やらせているというと乱暴ですが、試合では子供達自身にポジションやシステムを考えさせて任せていることも多々あります。ですので練習ではポジションを決めず、それぞれが好きなポジションについています。
サッカーのトレーニングや研究は他のスポーツに比べ発達していますが、それでも先週の成長を見極めるのは難しいのでしょう。
以上が回答ですが、これは当クラブが「育成」を最優先としている故の理由です。これが「試合での勝利」を最優先とした場合には全く違う指導になります。ボールが自分のところに転がって来た際に、そこが自分達のゴールに近い場合、ボールを奪われたらすぐに失点してしまいますので、直ちに遠くに蹴飛ばしてリスクを回避するプレーが正解になります。
ポジションにしても早いうちに固定すれば、そのポジションでしなけばいけないプレー、してはいけないプレーが分かり、チーム戦術の向上にとても役立ち、試合に勝つ確率はぐっと高まります。
「育成」と「勝利」。どちらが良いかはいつの時代も議論になりますが、両方ともにメリット、デメリットがあります。指導者はそのバランスをうまく調整していくことが大事なのでしょうね。